システム投資の妥当性検証
大手アパレルブランドの通販部門から、リース終了に伴うシステムリニューアルにあたり、システムベンダーから提出された仕様書と見積について、妥当性を検証してほしいというご要望でした。
システム総額は約3億円。グループ全体の事業規模から見れば妥当な金額とも言えるのですが、イチ部門の投資としてはかなり高額です。
1.開発がなくなったのに費用発生?
旧システムの移行と追加、出荷検品、情報系、サーバーなどインフラの4項目が主な内容で、当初の仕様とその後の会議議事録などを見比べながらまとめていったところ、当初仕様に対して、結構手間のかかりそうな事項について「今回は実施しない」と結論されている項目が散見されました。
見積は何回か再提出されていましたが、実施しない項目についての減額記載はなく、その分は減額されるべきではないかという指摘と、全体的な単価、工数が一般より高く、悪く言えば予算ありきで調整按分された見積と言えなくもないように思う旨を正直にお伝えしました。
2.新旧システムコンバートなどの単純作業に人月100万円超
単純作業工程では、100万円/人月を超える費用で算出されていました。
このコンバージョン作業は数千本という単位なので、積み上げで見積がふくらんでいます。
一般的に、システムの新旧コンバートといった比較的難易度の低い作業は、経験1~2年程度のプログラマーが行うもので、単価的には安いところで30~50万/月、高くても70~80万円/月が妥当なラインです。
開発は一社集中で管理されるほうがよいですが、交渉ができず、どうしても費用を抑えたいならば、コンバージョン作業のみでコンペにするか、安くて信頼できる会社を紹介できる旨でお伝えしました。
3.論理設計が15人月
論理設計として15人月の費用が計上されていました。
システムリプレース案件での論理設計で、それほどからないのではないか、というか、全体的な工数と単価が、私の知る大手ベンダーと比べても割高感が否めない旨をお伝えしました。
4.ホスティング費用 年額2千万円
開発前での試算とのことでしたが、要件が固まれば開発とは切り離してよいものなので、これも再度コンペを行うか、もう少し精査すべき項目であることをお伝えしました。
信頼と安定稼動に重点を置くのが大企業の宿命と割り切るか否か
大企業ならずとも、システムのリプレースは会社にとっても大きな決断になります。
必ず安定した稼動を行うというのが大前提になり、コンペによる相見積を行ったとしても、長く付き合いのある現状のシステムベンダーに引き続きで依頼することが多くなるのも当然のなりゆきです。
ただ、本来はシステムのリプレースの際に、新しい機能の追加や、現状の問題解決のための改善提案などを目いっぱい盛り込んだ要望からスタートし、ベンダーがそれを実現するための提案をしていくかたちが望ましく、システム部門は現場の要望を技術的にサポートしてベンダーと交渉を行う窓口として機能すべきです。
今回の依頼は見積の妥当性精査ということでしたので、指摘以上には深く関わっていけませんでしたが、結局、新旧リプレース(簡単に言えばソフトとハードのバージョンアップ)が最重要項目という前提で、ベンダーの言いなりで進んでしまっているプロダクトだという印象が拭えず、いろんな意味で「勿体無い」なぁと思った次第です。