BtoB企業がBtocへの取り組みを開始

クライアントは、食品卸会社。
一般食材はもちろん、病院や介護施設などとの取引も多く、治療食や介護食といった専門的な食材も多く扱っています。
今回は、ホームページ全般の見直しと、治療食や介護食を販売するネットショップの立ち上げをご希望でした。

現状行っている個人への対応をネットに移行する狙いも

現在のホームページは、会社案内と取り扱い商品については概要が記載されているのみとなっていました。

システムに関しては社長自身も詳しくプログラムが開発できるシステム担当の社員もおり、販売管理システムや倉庫ピッキングシステム、冷凍施設の節電システムなども自社で開発を行ったとのことで、開発技術には自信を持っているが、Btocに関する知識やネット事業に関しての考えかたを整理しておきたいとのことでした。

現在の取引先の中で飲食店などは限りなくCに近いB、また個人的に注文されるお客様もおり、送付したり会社まで取りに来られる方もいるとのことでした。

また、病院や介護施設によっては、個人の注文をとりまとめているケースがあり、注文者別に小分けも行ってお届けするBtoBtoCの形態もあるとのことで、これらをまとめてWebで注文していただけるようにし、その仕組みを利用すれば一般顧客への販売も可能になるという構想です。

BtoCネット通販に必要な機能を整理

この2つのご要望は、楽天やアマゾンなどのモールやe-ストアのようなショッピングASPでも解決できず、CSカートやEC-Cubeなどをカスタマイズする方法しかありません。

特にリアルタイムでの情報更新の部分はWebシステム側では用意されているものはなく、どういうシステムを利用するにしても別途開発が必要で、これを必須条件にすると数百万円単位の投資が必要になります。

そこで、最終目標としてのあるべき姿と、スタート時に最低限必要な機能を切り分けて考えていくことにしました。

独自でネットショップを開設する方法

まず、システムインフラとして、現在使用しているレンタルサーバーの契約がどのようなものかをお聞きしました。

独自でショッピングシステムを構築するには、ショッピングに必要な機能が揃ったCMSと呼ばれるものが不可欠で、これが設置可能なサーバーでなければ、新たにレンタルサーバーを契約する必要があります。

また、通信の暗号化を行うSSLの契約や、決済システムの導入契約なども必要で、準備にも時間がかかります。

ショッピングシステムを提供しているASPを使う

ネットショップに必要な機能が揃い、集客サポートとしてカカクコムなどにも掲載が可能な環境を提供しており、初めてネットビジネスに参入するのであれば、こちらをおすすめしています。

システムが常に最新の状態に保たれることや、各種カードやコンビニ支払い、後払いなどにも対応した決済システムが用意されていることなどから、開店までの時間が少なくて済むということ。
デメリットとしては、自社システムとのリアル連携など、カスタマイズができない、自由度がないということが挙げられます。

いくつかのシステムをご紹介して検討し、ひとつのシステムに絞り込みました。

まずは会社のホームページに商品情報を掲載したい

ご要望のひとつは、現在のホームページに商品の情報を掲載したいということでしたので、技術的な整備方法についてお話をしました。

社内システムの中に商品の基本情報はあり、ネット用の付加情報もこの中で管理して在庫数などもネットとリアルタイムに連携したいというご希望でした。

Web側にデータベースを用意し、初期の段階では社内システムから抽出した商品情報を全て登録します。

その後は、社内システム側で商品情報や在庫数が変更された時点で、Webシステムに対してもデータを更新する命令を投げるようにすればよく、現時点のweb技術での一番良い方法はAPIで連携させるのが最も簡単で効率的です。

初期商品マスタの整備

いずれにせよ、商品情報の整備をすることから始めないと、BtoBでの受注の自動化もBtoCショップへの取り組みもできないため、基幹システムの中にある基本情報に、商品説明や成分表などの付加情報を結びつけていくことについて設計を行っていきます。

現状では付加情報はなく、データを取得する方法も紙ベースのものしかないため、手作業で登録していく必要があります。
登録に関しては、業者に頼むか自分で在宅などで登録してくれる人を探すかの2つ方法があり、それぞれのメリットとデメリットをお伝しました。

専門業者に頼む場合、一定の品質とスピードを確保できる反面、費用が割高になります。
一方自分で探す場合は、社員の家族など身内に頼む方法と、ソーシャルワーキングなどで募集をかける方法があり、費用的には業者に頼むよりも安くすることができますが、品質や管理面で人手がかかります。
社員の収入を増やす施策として実施するなども一案です。

ただ、成分表については、メーカーによって表記単位が異なっているなどで、登録する際に単位の読み替えを行うなど、表記通りの登録だけではないことなど、慎重にチェックを行うことが必要なこともあり、できれば社内スタッフで進めるのがよいだろうという結論に至りました。

物流体制の確保

物流は自社の車両で決まったところを巡回訪問するかたちで運営されており、梱包なども余ったダンボール箱等を再利用するなどでまかなっていましたが、

BtoCの運用を開始するとなると、梱包材やストアカードなども用意をし、宅配便を使うための送り状なども用意する必要があり、現状の人員で運用できない可能性も考慮し、BtoCの配送について代行してくれる業者を探してみることにしました。

食品でなければ顧客対応等も行ってくれるフルフィルメントの会社もあるのですが、冷蔵、冷凍庫で在庫を保管して出荷を行ってもらえるところはなかなかなく、苦労しましたが、幸い一社見つかり、社長とともにそこへお伺いして倉庫の見学をさせていただき、しくみや料金などの打ち合わせを行いました。

在庫を置く棚単位での料金設定で、利用側は出荷指示を行うだけで、ストアカードなどの同梱、お客様への出荷案内メールの送信なども行っていただけるということで、機能的には満足できるものでした。

まとめ

BtoBの事業者がネットでBtoCを行う場合、顧客対応や物流に関してどういう考えかたでどういう準備が必要なのかを整理していきましたが、BtoCの場合はBtoBに比べて細かな作業を行う必要があります。

このため、特に立ち上げ当初は自社ですべてを行おうとせず、BtoC経験者やプロに任せたほうがうまく進みます。

今回は、ネット事業に必要な考えかたや顧客、商品、物流について一応の道筋を立てるところまでをご支援させていただきました。

あれもやりたい、これもやりたいというふうにしくみや機能の要望が広がっていくのは悪いことではなく、まず最終的な目標をするところを決めることは非常に重要です。

この目標に向かって、まず初期段階でどこまでやるのか、一般的なしくみやシステムを使ってどこまで実現できるのかを知り、標準的なショップとして費用を最小限に抑えて立ち上げを行うこと。
事業が軌道に乗ってきた時点でそれなりの費用をかけてリニューアルを考えていく「小さく産んで大きく育てる」考えかたで進めるというのが成功の近道と言えます。