テレビ局のテレビショッピングサイトリニューアル

テレビショッピングのオーダー受付とネット通販サイトのリニューアル支援。

導入にあたってのシステムテストや現システムからのデータ移行設計、運用面での効率化等に関するご支援を行わせていただきました。

数千万円のシステムが動かない

システム選定には関わっておらず、導入が決まり、4月稼動に向けてシステムのセッティングと、クライアントの業務に沿った調整が行われる2月初旬からの参加となりました。

システムは、大きく分けてコールセンター業務を行うためのシステムとネットショップのシステムの2つで、システム検証のためのテストプランやウォークスルーテストについて設計を行いました。

ウォークスルーテストの初日、こちらで用意したテストシナリオに沿って、顧客の登録、商品の登録、購入完了までのテストを行う予定だったのですが、これが動かない。

商品マスタひとつとっても設定する画面が多数あり、ひとつ設定を間違うと、管理画面やショップ画面に商品が表示されなかったり、購入ボタンが押せなかったり。

全体的なユーザービリティが非常に悪く、ひとつひとつ開発会社と確認を取りながら進めるも、ほとんどテストができずに4時間以上が経過、途中で終了せざるを得ない状況になりました。

受発注に対応していない?

クライアントのビジネス形態としては、
1.在庫を事前に納入するパターン
 限定数での売り切りで限定数に達したら販売終了となる。

2.受注後に1品ずつ発注するパターン
 このパターンが一番多い。

3.受注後にロット単位で発注し、残りは在庫として管理するパターン
 単品での出荷に対応していないメーカーも多いため、注文があった時点でロットで仕入れを行う。

の3つあり、これは小売業であればごく普通のパターンで特にイレギュラーな運用ではありません。

しかし、このシステムは基本的に実在庫のある前提の1のパターンにしか対応をしておらず、
2は「限定数のない在庫」という設定で、受注があれば在庫がマイナスになっていくかたちでの管理、
3は完全に手動での運用となることが判明してきます。

このため、発注管理は注文データを出力したデータを別のソフトウェアに読み込ませて納期管理や入庫消し込みを行うなど煩雑な処理を行うことになりましたが、作業負担の増大とともに、手作業での抜けや漏れの発生が懸念され、このままでは受注を受けても正常に出荷を行うことは難しいだろうと思いました。

提案として、逆に入庫の情報をもとに受注を納期順に引き当てていくかたちでの運用にして、出荷指示を行う際に、もし入庫されていないものがあればお客様に連絡をとるなどの処置が行えるようにすることと、可能な限り前段階で遅延等が把握できるよう、発注状況と入庫状況が一覧でわかる資料の出力を開発会社に要請するなどを行いました。

実稼動 その後

その他、数え切れないほど「動かない」「おかしい」がありましたが、
A・・お客様に迷惑がかかるもの
B・・運用負荷の高いもの
C・・社内情報処理(経理等)に必要なもの
の3つに分類し、開発会社に要望書として提出しました。

開発会社からは夏から秋にかけて修正、調整を行う旨の回答。
それまではすべてを人手でカバーする前提で4月中旬、本番稼動に突入することになります。

私は5月末でサポートを終了することになりましたが、その後、顧客対応部門では連日深夜に及ぶ残業が続き、要望に関してすべてが対応できるとしていた夏秋になっても、状況は改善しなかったようです。

システム選定は誰がする?

結局、このシステムは完全には動かず、クライアントは旧システムを再度使用することとして、開発会社とは法的な手続きをとることになりました。

システム選定にあたっては、数社でコンペを行ったとのことでしたが、選定ミスをしたために、結果として多くの労力と資産が費やされてしまうことになりました。

当初の要求仕様も見せていただきましたが、それ自体はよく出来ているもので、
その要求を実現できるとする開発会社の提案もよくできていました。

ただ、システムで可能かどうかと問われれば、開発会社は間違いなく「可能である」と答えます。

理論的に可能であっても、実際に操作する人間が使いやすいシステムは専用システムで、汎用的なシステムであればあるほど操作性は悪くなります。

経営層やシステム担当者がシステム選定を行うと、実現させる機能を重視しすぎた結果、汎用性の高いシステムを選定する傾向にあり、今回がまさにそのパターンになっています。

システム選定は、経営層やシステム担当者だけではなく、現場で実際にオペレーションをするメンバーを加えてください。
また、同業他社への導入実績の有無も重要で、テレビ通販ならテレビ通販なりの特殊な事情を理解している開発会社を選ぶべきです。

経営的な要望、機能的な要望を押さえながら、各部門ごとのキーマンや実務担当者が直感的に操作できるユーザービリティやレスポンシビリティを実現させるシステムが見いだせたはずです。

もし、そういうとりまとめを行う人がいなければ、喜んでお手伝いさせていだきます。