最大の問題は在庫の把握

昭和中期に創業した雪駄やスリッパなどのはきもの製造メーカーさん。

アイテムは約300種、国内外の協力会社含め月間の生産約15万足あり、出荷と売掛・買掛管理はシステムで行っているのですが、ベースは手書きの伝票、同じく手書き一覧形式の受注・在庫管理。

特に、一部商品の在庫に関しては情報の共有がされていないために、お客様からの問い合わせにすぐに答えられないことや、在庫高の把握ができないことは発注管理や経営的にも支障があり、システムを活用した解決を望まれていました。

手書き管理はシステムですべて解決するべきか?

利用されているのは市販の一般的な販売管理システムで、社内の運用をシステム寄りに変えることで、求められている在庫の管理は十分に可能です。

ただ、長らく社内で工夫を重ねてきた一覧形式の受注管理シートは、担当者による色分け、受注、出荷などがコンパクトにまとめられており、また、システムの導入されている端末は2台のみで、スタッフが常に伝票の入出力を行っているため、商品管理を行っているスタッフが自席で随時登録したり確認できない状況。

すべてをシステムに依存してしまうと、現状で実務的に支障が出る、これを解消しようとすると、システムの入ったPCをすべてのスタッフの席に用意する必要があり、ライセンス等のランニンク費用がかかってくる。

また、アイテムがそう多くない場合にはデータのハンドリング、一覧性という面でシステムは紙に劣るということも過去の経験から身にしみており、結論として、現時点ででは情報共有のための投資としては増設すべきではないという判断をし、この手書き運用は残しておくことにし、一部この運用が行われていなかったカテゴリに関しても、このシートを作ることで情報共有を行うことにしました。

商品マスタの統一をはかる

システムの中を検証したところ、商品マスタの重複が多々見られました。
製造外注を行っている仕入先によって同じ商品でも商品名や型式が違ったり、発注時期のロットによる原価違いを別商品として登録することで区分けをしていることがわかり、

商品マスタの整備と入荷、出荷登録の運用方法を定め、棚卸の際にシステムを利用することで改善を行っていくことにしました。

現行システムを稼働させながら、商品マスタを削除していく方法は?

さて、ここで重大な問題として上がってきたのが、現在稼働しているシステムを止めず、過去の伝票や売掛・買掛に支障をきたさずに、どうやって重複した商品マスタを削除、統合していくかということでした。

現在使用されている商品を削除してしまうと、システムによっては伝票データも消えてしまうことがあり、売掛・買掛にも影響を及ぼしてしまう恐れがあり、ここは非常に慎重に進める必要があります。

販売管理システムの開発元に問い合わせ、商品統合という方法によって過去の伝票データに影響なく移行していくことが可能だということがわかり、実際にテストデータを作って検証を行って伝票データに支障が起こらないことを確認しました。

棚卸までに力技で商品マスタを整備

まず、商品マスタをユニークな状態にすること、これはシステム上の商品一覧をもとに、どれを残し、どれを消すかの選択を行うこと。

次に、実際のシステムで「削除用商品」という商品をひとつ登録し、削除すべき商品を「削除用商品」に統合していく作業。

いずれも力技である程度の期間を要しますが、これを行わないと始まらない。

実地棚卸をシステムから出力された棚卸表をもとに行う

統合された商品マスタをもとに、棚卸表を出力します。
当然ながら、ここに記載されている在庫数は正しいものではありませんので、実地棚卸の数量を、システムに登録していきます。

これでようやく在庫管理の土台ができます。
あとは今後の運用方法について、ルールを決めていきます。

運用ルール

商品の登録は商品部のスタッフが行うこと
 伝票登録者は商品の登録を行わず、商品部スタッフが重複の確認を行いながら商品登録を行う。
 ロットや発注時期による仕入単価の違いと在庫金額の把握については、商品を分けるのではなく、仕入伝票で単価を変えることで、先入れ先出しによって評価されるようになっていることを説明し、実際の出荷時にも先入れ先出しを行うことでほぼ問題なく運用できる旨を説明しました。

実地棚卸はシステムから出力された棚卸表によって行うこと
 毎月行う棚卸では、システムから出力される棚卸表を必ず使用して、理論在庫と実在庫の差異を常に把握しておくこと。
 商品マスタの重複などが発見された場合には、初期に行った統合によって常に正しい情報にしておくこと。

発注、受注を登録することで戦略的な在庫管理へ
発注段階、受注段階でシステムへの登録を行うことで、いつ、どれくらいの入荷、出荷があるのかを把握できるようになり、製造計画の参考にしたり、発注からの納期が短い商品に関しては適正在庫を設けることで、効率的な在庫調整が行えるようになることなどを説明、現在の運用ではリソース的にも難しい部分がありますがぜひ取り組みをしていただきたい部分です。