個人事業から法人化を行いたい

個人事業を法人化(株式会社)したいというご相談をいただき、
法人化に関する留意点や企業としての考えかた、事業計画をまとめていきました。

現状をお聞きすると、先代から約50年にわたって塗装業を営まれており、当代になってフランチャイズなどにも加盟して業績は順調に推移をしているとのことでした。

課題は経営状態の把握と人材

聞き取りを進めていくと、大きく2つの問題が浮かび上がってきました。
ひとつは、売上や経費など会社の数字についての管理がなされておらず、領収書などはすべて税理士さんに送付、確定申告の際にようやく自分の所得が把握できるという状態。

もうひとつは、業界の特徴でもあるのでしょうが、施工を行う職人さんはほぼ専属ながら雇用の形態はとっておらず、案件ベースで依頼を行う専門職集団であることから、社内の諸業務や営業施策などを行う総合職は社長一人。営業面や事務面でなかなか手の届かないところがあるということでした。

個人事業から法人化を行う場合の留意点

個人事業から法人化を行う場合の留意点として一番大きなものは、個人事業の資産を法人に売却することと、その年度の事業税を未払計上しておくことを留意点としてお伝えしました。

固定資産や棚卸資産の引き継ぎについて
固定資産・棚卸資産は個人から法人への売却で引き継ぎます。個人事業で消費税の課税事業者となっている場合、課税売上とみなされます。

個人事業税を未払計上しておく
法人化(=個人事業の廃業)の場合、個人事業税は必要経費として落とすことができなくなります。個人事業主として最後の確定申告を行う際は、翌年度の事業税の金額を予め算出しておき、翌年度の事業税の金額を計算し未払計上することで必要経費として落とすことができます。

法人登記は専門家に任せる

法人登記自体については、長年の顧問税理士がいらっしゃるということと、一生のうちに何度もあることではないので、どうしても自分で手続きしたいということでなければ、専門家に依頼をしたほうが、電子申請など自分で手続きするよりも費用も安く手間もかからないとお伝えしました。

ただ、自分でも知識としては持っておいたほうがよいので、必要書類や所轄官庁、手続きについてざっとお伝えすることにしました。

まず、登記手続きに25万円程度と、毎年の決算の手続きも非常に煩雑なので税理士さんにおまかせするとして約20万円程度が最低でもかかり、所得に対してかかる法人税、法人事業税の他に地方税、法人住民税などの税金もかかってきます。

書類については所轄官庁ごとに提出する必要があり、まず税務署では、
「法人設立届出書」「棚卸資産の評価方法の届出書」「減価償却資産の償却方法届出書」「給与支払事務所等の開設届出書」「源泉徴収納期の特例の承認に関する申請兼納期の特例適用者に係わる納期期限の特例に関する届出書」「青色申告の承認申請書」を設立の日から2ヶ月以内に定款の写しや登記簿謄本などとともに提出します。

都道府県税事務所に「法人設立・設置届出書」

社会保険事務所に「新規適用届」「被保険者資格取得書」「被扶養者ゅ異動届」「国民年金第3号被保険者の届出」

ハローワークに「適用事業者設置届」「被保険者資格取得届」などの雇用保険関係

労働基準監督署に「保険関係成立届」「適用事業報告」の労災保険関係

都道府県労働局に「労働保険概算保険料申告書」

いずれも開設日から10日以内、長くても3ヶ月以内に提出する必要があり、自分でやろうとするとかなり大変です。

経営理念からはじまる経営方針を策定しましょう

法人化という節目にあたって、前述の2つの課題を整理していくことが必要だということをお話し、経営計画を策定する前段階、経営理念や経営方針から数値計画までを策定していく提案をしました。

<つづく>